CBD/ABSセミナー
「名古屋議定書に基づく欧州域内措置の動向」


日 時 :平成27年10月30日(金) 15:00〜17:00
場 所 :JBA会議室


プログラム

  1.   欧州域内措置の動向 JBA 井上 歩 
  2.   各国法
        ブラジル「遺伝財産に関する法律」概要  (独)製品評価技術基盤機構 須藤 学 
        フランス「生物多様性、自然及び景観の回復のための法律」法案 JBA 野崎 恵子 
  3.   国内外最新情報 経済産業省 生物産業課 生物多様性・生物兵器対策室 鳴瀬 陽 
  4.   質疑応答


【概要】

JBAは、EUの利用国措置を、日本の国内措置検討の参考として策定状況をウォッチしてきた。
その為、昨年度に引き続き、国際商業会議所(International Chamber of Commerce:ICC)のシンポジウムに参加し、情報収集を行った。
本セミナーは、そこで得た情報を国内関係者にシェアすることを目的として開催した。同時に、JBAが入手している各国の法令策定につき、遡及的意味合いを持つという点で特徴のあるブラジル法令及びフランスの法案についてお知らせし、一方で、日本政府が検討している名古屋議定書の措置について、開示できる範囲で経済産業省から報告をして頂いた。


【名古屋議定書に基づく欧州域内措置の動向】

JBA 井上 歩 

名古屋議定書に基づくEUの域内措置は、昨年EU規則NO.511/2014が策定され、本年10月12日に運用開始となった。
それまでに、細則であるCommission Implementing Regulationが官報に掲載され、EU規則の適用開始と同時に発効かと考えられていたが、実際はそうはならず、EU規則の適用開始後の、10月13日に採択され、20日に官報に載り、20日後の11月9日に発効となった。
結果として、EU規則は、法律ではあるものの「走りながら考える」といった運用であり、発効と同時に明確な運用が始まる日本の規制法令とは大きな違いがあることが分かった。


【ブラジル「遺伝財産に関する法律」概要】

(独)製品評価技術基盤機構(NITE) 須藤 学 

ブラブラジルは2001年に「遺伝遺産、関連する伝統的知識及び技術移転に関する暫定措置令第2186-16号」を制定したが、今回成立したL.No.13123でそれが置き換わる。
ブラジルの新たなABS法令である「遺伝遺産に関する法律L.13123」は下記のような数々の特徴を持つ。
まず、定義においては、遺伝資源ではなく「遺伝財産」を用いている点であり、これはCBD上の意味に加え、情報及び該生物の代謝から生じる物質(派生物)も含む。また「アクセス」は、生物多様性条約(Convention of Biological Diversity: CBD)では「取得」の時点であるが、ブラジル法では「遺伝財産のサンプルに対する研究または技術開発」とされている。これにより、今までのアクションを執るタイミングであった一つの時間軸に決定的な違いが出てくる。伝統的知識に至っては「展示会、出版物、目録、映画、科学記事、記録およびその他の形式の伝統的知識についての編成資料や登録簿のような二次資料から得られても、遺伝財産へのアクセスを可能にする、または容易にする研究または技術開発」とされ、もしテレビや学会誌でヒントを得たとしたら、それも対象になる、としている。
その他の特徴として、外国人の遺伝財産の取得は禁じられ、外国法人は、ブラジル国内研究機関との連携をする場合のみ認められるとしている点がある。
また、所謂CBDでいうところの「事前の情報に基づく同意(Prior Informed Consent :PIC)」がなく、その代わりに、ある利用の段階で登録が必要であるという点。(第12条)、また、利益配分を確保するため、最終製品の開発に際して通知(いつ取得したか、という時点は設定されていない)と利益配分協定が必要となっているという点も挙げられる。尚、利益配分は、金銭的利益配分の場合、年間純売上高の1%と定められている。
また、2001年に発効された暫定措置法を遵守していない利用者に対して、経過措置も設けられている。また罰則も備えられている。企業にとっては罰則の適用が「連帯責任」である点に留意すべきである。
当該法令は、2015年の11月16日に発効するが、利用者にとっては、今後の細則が出てこないと、数々の詳細(当局や利益配分率の算定基準)事項は不明なため、運用が面での更なる情報が待たれる。
NITEとJBAの仮訳は、JBAのABS専用WEBサイト(http://mabs.jp/countries/others/s_america.html)及び、NITEのホームページにて閲覧できる。


【フランス「生物多様性、自然及び景観の回復のための法律」法案】

JBA 野崎 恵子 
フランスは、昨年より名古屋議定書に関連する項目も含め、ABSに関する国内法を検討中であり、現在は上院で1読目である。JBA&NITEが翻訳した】 は、2015年3月の下院通過版である。
フランス法案の特徴は、2点である。
先進国でありながら「提供国措置」(海外領土を含む。フランスは農業国であるという政策を反映して、家畜や植物の育種が除外。)を設定している点と「新規利用(コレクションから得た遺伝資源に限る)」である。特に後者については、資源の取得時点を問わず「利用の時点」での利益配分が求められるということが注目すべき点である。


【名古屋議定書を巡る国内外の動向等】

経済産業省 生物化学産業課 鳴瀬 陽 
名古屋議定書に関する産業界等からの意見を認識しており、一方で、国内措置の検討にあたっての名古屋議定書が含む数々の問題点を踏まえ、各国の法制化を勘案し、現在の国内措置の検討の方向性について報告した。

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