第5回JBAオープンセミナー(名古屋)報告
平成16年7月8日、JBA主催、NPOバイオものづくり中部、名古屋大学大学院生命農学研究科共催による第5回オープンセミナー「生物資源へのアクセスと利益配分の国際ルール」を名古屋市(ホテルグランドコート名古屋)で開催した。
本セミナーには、医薬、園芸、化粧品、食品等の業界、特許事務所、投資コンサルタント等の知財権関係者、大学の研究者など約40名が参加した。
1. プログラム
開会挨拶 経済産業省製造産業局生物化学産業課 事業環境整備室 国際係長 長尾勝昭- 「バイオ分野における知的財産権の南北問題」名古屋大学農学国際教育協力研究センター 助教授 武田 穣
- 「生物資源をめぐる国際動向と今後の課題」(一財)バイオインダストリー協会 常務理事 炭田精造
- 「生物資源へのアクセスと利益配分の国際的ルール」製品評価技術基盤機構・バイオテクノロジー本部 調査官 安藤勝彦
2. 講演概要
- 「バイオ分野における知的財産権の南北問題」
バイオ分野における国際的枠組みの現状とそれに伴う南北問題について解説し、企業の研究開発戦略への影響等を考察した。そして、現状を良く理解し、研究開発に当たっては必要な情報を得、必要な手段をとることが肝要であると述べた。講演は、①バイオテクノロジーに関する国際問題(知的財産、医療、生命倫理、天然資源アクセス、遺伝子組み換え生物)、②医薬品に関する南北問題(抗エイズ薬等を例に医薬品における南北の問題点)、③知的財産権に関する南北問題(WTOとTRIPS協定、知的財産権と伝統的知識)、④生物多様性条約(アクセスと利益配分、食糧・農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(ITGRFA)、カルタヘナ議定書)で構成され、バイオに関して複雑に入り組んだ国際条約についてわかりやすく解説し、次の2演題に引き継いだ。 - 「生物資源をめぐる国際動向と今後の課題」
①生物多様性条約(資源アクセス、伝統的知識)の概要、②条約に基づく途上国の国内法と地域協定、③インドと米国間の国際紛争事例、④NGOによる社会運動と“バイオパイラシー”、⑤国際指針としてのボン・ガイドライン、⑥拘束力を持つ新しい国際規制の是非、⑦世界の動き、⑧日本は何をすべきか?-という内容で講演した。CBDからボン・ガイドラインへの経緯、CBDをめぐる世界の動き(各国国内法の策定、バイオパイラシー・紛争問題等)、さらに今後の具体的な問題点について解説した。ボン・ガイドラインは、アクセスと利益配分施策の立案、契約の作成時等に使用されるものであり、その範囲は人を除く全ての遺伝資源、伝統的知識、それから生じる利益が対象である。またこの指針には、特許出願時に遺伝資源または伝統的知識の原産国(出所)の開示が奨励されている。今後、生物遺伝資源に携わる関係者は、この指針をよく理解し、それに基づいて行動することが望まれると述べ、CBDの正しい理解が必要であることを強調した。
最後に我が国としては「国際交渉」の結果に振り回されないための「独自の対処」が必要であると述べた。 - 「生物資源をめぐる国際動向と今後の課題」
講演はアクセスと利益配分に焦点を当て、CBDの重要ポイント、及び第6回締約国会議を経て決まったボン・ガイドラインの詳細を解説した。また、我が国の「バイオテクノロジー戦略大綱」にふれ、研究開発の基盤となる生物遺伝資源所有国と協調しながら戦略的に生物遺伝資源の充実を図る事例として、NITEとインドネシア、ベトナムとのプロジェクト(生物多様性条約を遵守し、微生物資源の探索を行い、有効利用を図るための共同研究)の経緯、成果を紹介した。そして「生物多様性条約をプラスと考え、21世紀の生物資源有効活用の戦略を練る必要がある。それは、日本と生物資源提供国がwin-winの関係でなければならない。」と締めくくった。