第6回JBAオープン・セミナー(福岡)報告
平成16年12月3日、第6回JBAオープン・セミナー「生物資源へのアクセスと利益配分の国際ルール」を福岡市(八重洲博多ビル・ホール)で開催した。
本セミナーには、特許事務所、銀行、投資コンサルタント、バイオ関連ベンチャー、官庁、大学等の知財権関係者、植物研究者など36名が参加した。
1. プログラム
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開会挨拶 水産大学校 水産情報経営学科 専任講師 最首太郎
- 「遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する我が国の政策の動向について」長崎大学経済学部 教授 嶋野 武志
- 「生物資源をめぐる国際動向と今後の課題」(一財)バイオインダストリー協会 常務理事 炭田精造
- 「生物資源へのアクセスと利益配分の国際的ルール」製品評価技術基盤機構・バイオテクノロジー本部 調査官 安藤勝彦
2. 講演概要
- 「遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する我が国の政策の動向について」
CBDからボン・ガイドライン、国際的制度への遺伝資源をめぐる現状と、我が国の政策について解説した。政策の基本的方向性は、①我が国産業界などの遺伝資源利用者が、海外遺伝資源へのアクセスを円滑に行うことができること、②遺伝資源提供者とその利用者との間にwin-winの関係を構築できるようにすること、である。具体的政策として、①国際的制度への慎重な対応、②アジアの遺伝資源提供諸国と良好な関係を構築すること、さらに③遺伝資源アクセスとその利用から生じる利益の配分を適正に行うための“日本版手引”の作成、が現在進行中であり、国内関係者の理解を促進していきたいと考えている。 - 「遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する我が国の政策の動向について」
CBDからボン・ガイドラインへの経緯、CBDをめぐる世界の動き(各国国内法の策定、バイオパイラシー・紛争問題、欧州や米国の動き等)、さらに「国際的制度」をめぐる国際交渉の展開について解説した。ボン・ガイドラインの範囲は、人を除く全ての遺伝資源とそれに関連する伝統的知識、またその利用から生じる利益が対象となっている。さらにこの指針には、特許出願時に遺伝資源や関連する伝統的知識の原産国(出所)の開示が奨励されている。生物遺伝資源に携わる者は、この指針をよく理解し、これに基づいて行動することが望まれ、CBDの正しい理解が必要であることを強調した。最後に、我が国がこれまで国際交渉の場で行ってきた提言を紹介し、我が国独自の対処について話した。 - 「生物資源へのアクセスと利益配分の国際的ルール」
講演はアクセスと利益配分に焦点を当て、CBDの重要ポイント、及びボン・ガイドラインの詳細を解説した。研究開発の基盤となる生物遺伝資源の所有国と協調しながら戦略的に生物遺伝資源の充実を図る事例として、NITEで展開中のプロジェクトの経緯、成果を紹介した。NITEは現在、東南アジア諸国(インドネシア、ベトナム、ミャンマー)と「微生物資源の保全と持続的利用に関する覚書」、共同研究契約書を締結し、生物多様性条約を遵守して微生物資源の探索を行い、有効利用を図るための共同研究を進めている。最後に「生物多様性条約をプラスと考え、21世紀の生物資源有効活用の戦略を練る必要がある。それは、日本と生物資源提供国がwin-winの関係でなければならない。」と締めくくった。