フランス
基本情報
(2020.3掲載)フランス共和国は、1994年9月29日に生物多様性条約の締約国となり、名古屋議定書には、2011年9月20日に署名、2016年8月31日に名古屋議定書の締約国となった。
名古屋議定書に批准するために策定した国内措置には、次のものがある。
- 「生物多様性・自然・景観の回復のための2016年8月8日付け法律第2016-1087号」
- 「遺伝資源及び遺伝資源に関する伝統的知識の取得、及びその利益から生ずる利益の配分に係わる2017年5月9日第2017-848号政令(デクレ)」
両法令は、政令(細則)が発効した日である2017年7月1日に発効している。
特徴は、野生からの取得を適用範囲としており、栽培種などは適用外であること、利用時にアクションが必要なこと、生息域外コレクションの新な利用(医薬品を化粧品目的に利用するなど分野が変わる場合)には新な手続きが必要とされること、また、別法令で、前述の法令から、フランス本土の微生物については3年間の適用除外の定めがあること,等がある。尚、本法令の発効日前にフランスの管轄権外に移転したものには適用されない。
概要は以下の通り。
- ①
- 適用範囲
-
- 者:
- ユーザとして:フランス及び外国における自然人又は法人
提供者として:国、ただし、遺伝資源に関連する伝統的知識はフランス海外領土自治体
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- 物:
- 野生遺伝資源、遺伝資源に関する伝統的知識(以下、ATK)
-
- 時間:
- 2017年7月1日以降・行為:非商業、商業目的での遺伝資源の利用時(採取時ではない)
(著者注:非商業利用はアクセス前に当局に相談した方が良い)
-
- ②
- 適用の除外
これに対し、除外規定が設けられており、以下は当該法令の適用外となる。
- ヒト遺伝資源
- 他の国際文書の対象である遺伝資源(例:ITPGRFA)
- フランス領域から移転したもの
- モデル実験動物等
- 防衛
- 交配のための遺伝資源(例:家畜など)
- フランス本土の微生物(2019年8月31日~2022年8月30日までの試行。loi n° 2019-486 du 22 mai 2019 relative à la croissance et la transformation des entreprisesの第129条を参照)
前述に加え、「2016年8月8日付け法律第2016-1087号」の一般規則については環境省が所管しているが、下記の特別事項については、各省が所管している。
- 「飼育種又は栽培種」、「近縁野生種」、「動物、植物及び食品衛生面の安全性に関わる保健衛生上の危険の予防、監視及び対策の枠組の中で研究所が収集した遺伝資源」食糧農業省が所管である。(2018年にこれらの遺伝資源に関してアクセス規制をしないことを決定し、今後もこの方針は変わらないと推測される。)
- 林業資源へのアクセスは、食糧農業省
- ヒトの健康に対する重大な危険の予防及び抑制のために研究所が収集した遺伝資源へのアクセスについては、厚生省
- ③
- 許可手順
- 非商業利用→申告手続きhttps://www.formulaires.modernisation.gouv.fr/gf/cerfa_15786.do
法人:https://www.demarches-simplifiees.fr/commencer/apa-declaration-pmorale
個人:https://www.demarches-simplifiees.fr/commencer/apa-declaration-pphysique - 商業手続き→認可手続きhttps://www.formulaires.modernisation.gouv.fr/gf/cerfa_15785.do
法人:https://www.demarches-simplifiees.fr/commencer/apa-autorisation-pmorale
個人:https://www.demarches-simplifiees.fr/commencer/apa-autorisation-pphysique
いずれも、法人と個人に分かれており、オンラインで申請が可能。
- 非商業利用→申告手続きhttps://www.formulaires.modernisation.gouv.fr/gf/cerfa_15786.do
- ④
- 利益配分
非金銭的利益配分が優先する。金銭的利益配分の場合、認可対象の遺伝資源から得られた製品又は工程により世界中で得られる年間税別売上高及び、その形態を問わない、その他の収入に対するパーセンテージをベース売上げの最大5%
- ⑤
- 遵守措置
EU各国は、EU規則No.511/2014により統一されているため、国が指定するチェックポイントにDue Diligenceを実施する必要がある。
CBD/ABS関連法令
法律
原文
邦訳
LOI n°2016-1087 du 8 août 2016 pour la reconquête de la biodiversité, de la nature et des paysages
生物多様性、自然及び景観のレコンキスタに係る2016年8月8日第2016-1087号法律(抄訳)
政令
原文
邦訳
Décret n° 2017-848 du 9 mai 2017 relatif à l'accès aux ressources génétiques et aux connaissances traditionnelles associées et au partage des avantages découlant de leur utilisation
遺伝資源及び関連する伝統的な知識の取得、及びその利用から生ずる利益の配分に係る2017年5月9日政令 第2017-848号
政令
原文
邦訳
Décret n° 2019-916 du 30 août 2019 relatif à l'exemption, à titre expérimental, des procédures d'accès aux ressources génétiques et de partage des avantages découlant de leur utilisation pour les micro-organismes de France métropolitaine
フランス本土での微生物へのアクセスとその利用にから生ずる利益配分の免除の試行に係わる2019年8月30日付け制令第2019-916号
邦文(なし)
その他情報
(2020.3 更新)過去の調査、報告、2国間ワークショップ
- 平成30年度セミナー「フランスのABS手続き」
- 平成28年度調査“フランス「生物多様性、自然及び景観の回復に関する法律」 ”
- 平成27年度調査“フランス「生物多様性、自然及び景観の回復に関する法律(案)(2015年3月24日付けNo.494」