タイ
基本情報
(2015.3 更新)タイは、2003年10月31日に生物多様性条約を批准し、名古屋議定書には2012年1月31日に署名している。所管は、天然資源環境省であり、ABS制度については、生物多様性の利用と保全に関する国家委員会が設置されている。
ABS規制は存在するが、正確な英語訳がないため、内容の把握が出来ていない。
一方で、国際共同研究の際には、The National Research council of Thailand (NRCT)に申請し、タイにおける(共同)研究の許可を得ることが、“Regulations on the Permission for Foreign Researchers to Conduct Research in Thailand B.E 2550.”により規定されている。手続きは、NRCTのウェブサイト(http://www.nrct-foreignresearcher.org/)に掲載されているので参照されたい。
2013年に来日された、Biodiversity-Based Economy Development Office(BEDO)のTanit氏によれば、タイの共同研究先がABSのスキームを実行し、採取活動の申請が必要な部署には、許可申請を行うとのことである。手続きはすべてタイ語で行われる。
CBD/ABS関連法令
(2020.3更新)Convention of Biodiversity (B.E. 2325)
原文
邦訳
The regulation of the National Committee on Conservation and Sustainable use of Biodiversity of the Criteria and Methods of the Access and Benefit-sharing of Biological Resources B.E. 2554
生物資源へのアクセスと利益配分の基準及び方法に関する生物多様性保全・利用国家委員会規程 B.E 2554(2011年)
Regulations on the permission for foreign researchers to conduct research in Thailand
原文
邦訳
邦文 → なし
タイには生物資源に関する以下のような国内法が制定されている。
- 1921年(仏暦2464年)野生ゾウ保護法
- 1941年(仏暦2484年)林業法
- 1947年(仏暦2490年)漁業法
- 1960年(仏暦2503年)野生動物保全保護法
- 1960年(仏暦2503年)保安林法
- 1961年(仏暦2504年)国立公園法
- 1975年(仏暦2518年)植物品種法
- 1989年(仏暦2532年)修正 林業法
- 1992年(仏暦2535年)野生生物保全保護法
- 1992年(仏暦2535年)修正 植物品種法
- 1999年(仏暦2545年)植物品種保護法
- 1999年(仏暦2545年)タイ国知的伝統医療保護促進法
タイの生物多様性保全に関する最初の国内法は、1921年に制定された野生ゾウ保護法である。その後、林業法、漁業法が制定されたが、野生生物保護区及び国立公園において最も効力があるのは、1960年の野生動物保全保護法と1961年の国立公園法である。そして、1993年にCBDが発効され、近年、それに合わせる形で「植物品種保護法」「タイ国知的伝統医療保護促進法」 が制定された。
「植物品種保護法」は、植物の新品種、伝統品種、野生植物種のあらゆる植物品種を保護するものである。1975年の「植物品種法」および1992年のその修正法は農業・協同組合省の所管により制定されたもので、植物品種を保護し、その品質及び輸出入を保護することを目的にしている。また、植物品種法は植物品種の育成者及びその品種の所有者を保護するものではなかったが、1999年の「植物品種保護法」は、育成者及び所有者の保護の内容を含んでいる。したがって、新品種に対する保護は、UPOV条約の原則におおむね沿ったものとなっている。
「タイ国知的伝統医療保護促進法」の施行は、公衆衛生省の所管である。この法律の目的は、タイに昔から伝わる伝統的な医療の利用を促進し、先住民の知識とタイの薬草を保護する点である。この保護については以下の2つの原則がある。
1)指定された薬草及び薬草の豊富な生態系の保護
2)先住民の知識とタイの伝統的医療の保護。地域社会及び個人は、みずからの知識と成果物(製品)に対する保護を出願して登録することができる。
その他情報
(2004年掲載)1.過去の調査、報告、2国間ワークショップ
- 平成25年度 現地調査 PDF
- 平成20年度 現地調査
「タイ天然資源環境省の大臣令策定に向けての現状」
タイ天然資源環境省(MNRE)は3年余り前から、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS)に関する大臣令(ABS Regulation)草案の策定作業を行っている。その最新情報を収集するために、2009年2月5日、担当官と筆者らとが面談した。以下にその結果を報告する。
日本側からは、①日本のバイオ産業の全般動向、②METI事業によるJBAのABS実施活動、について紹介し、「遺伝資源へのアクセス手引」、JICA-JBAによるバイオインダストリー集団研修コース、国連大学高等研究所-JBAによる「ABSケーススタディー」*1等の資料を提供した。
タイ側からの情報:タイは2004年1月29日に生物多様性条約(CBD)の188番目の締約国になり、2005年2月に第3回ABS作業部会会合をバンコクに招致した。その後、CBDの国内実施体制の構築の一環として、「生物資源の保全と利用に関する委員会」及び、その下に、「カルタヘナ議定書小委員会」と「生物多様性小委員会」を設置し、生物多様性小委員会の下に、「アクセスと利益配分作業部会」を設けた*2。その後、同作業部会は大臣令草案ドラフトの作成作業を完了し、草案は上部組織に送られ大臣令の策定に向けて政府内で処理中である。担当官によれば、タイ国内の政情不安定のため大臣令の公示と施行に向けての今後の日程はいまだ不透明である。
ABSに関する分野別担当部局の最新情報は次のとおりである。「アクセスと利益配分作業部会」はMNREが事務局を務め、委員長はMr. Wichar Thitiprasert(農業協同組合省農業局)である。委員は次の16の部局及び非政府組織の担当者で構成される:農業協同組合省(農業局、家畜開発局、漁業局法務部)、科学技術省(BIOTEC、TISTR)、厚生省(タイ伝統医学研究所、医科学局)、商務省(知的財産局)、MNRE(国立公園・野性生物・植物保全局、王立森林局、海洋沿岸資源局、植物園機構、国王下賜動物園機構、生物多様性課)、タイ国研究審議会(Research Council of Thailand)、共同体組織開発研究所(非政府機関)。
2年前と比べ教育省の代表がリストに載っていない。また、5名のメンバーが交代になっている。我が国からタイのABS関連情報を入手するためには、MNREを通じてコンタクトすることもできるが、直接に担当省庁にコンタクトしても良いとのことである。
*1 http://www.mabs.jp/archives/jba/pdf/IAS-JBAcaseStudies.pdf で閲覧可。
*2 平成18年度本事業報告書を参照。
- 平成18年度 現地調査「タイ政府の遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する施策の現状」